「でも、それでも逃げるなり叫ぶなりできたんじゃ……」 「……こんなとこで立ち話もアレですから中へどうぞ。」 彼女に背を向けて部屋に入る。 他人に話す内容でもないし。 それにこの人に訊きたいこともあるし。 ドアノブは明日どうにかしよう。 ギシギシとまた危うい音を床を踏むごとに聞きながら俺はそんなことを考えていた。 「……?」 彼女は入ってこない。 「どうかしましたか?」