〝信じてやれよ〟


あたしは信じられなかった。
亜優の事を。
大切な彼の事を。

亜優は信じてくれていたのに。
遅くなってもあたしを待ってくれていたのに。

でも、矢代さん呼んでるじゃん。
矢代さんに彼女いないっていってんじゃん。
そんな男信じなくてもいいじゃん。

自分の闇が光に覆いかぶさる。
やっぱり信じられない。



亜優の事を気遣える

その点に関してはあたしは矢代さんに負けている。

あたしは自分の感情をぶつけていただけ
矢代さんは亜優が困っているのをちゃんと分かっていた

きっと彼女だったらこうなった時、ちゃんと話を聞くだろう。


話、聞くべきかな
でも今会いたくない



午前8時の帰り道で
あたしはずっと後悔していた

さっきの家族たち


あたしのことを厳しく叱ったけど、言ってることは間違ってない

それをどうしてさっきのあたしは、ムキになって言い返してしまったんだろう。



否定してほしくなかった
あたしが正しいと言ってほしかった

ただのわがままだ


でも、でも…

あたしは亜優が好き。大好きだ。
だからこそ、こんなに苦しんでると知ってほしい。

亜優、好き。
大好き。
でも、だから苦しい。

どんな理由があっても、女の子と抱き合ってなんてほしくない。




バタン、と家に着く。

「あれ?友紀?友紀なの?どうしたの?学校なかった?」

玄関に来そうな母を

『きょうっ、早退したっ。ちょっと寝る。大丈夫だから、部屋には…入ってこないで!!』



そう言って部屋に閉じこもった。