『………え?』

「ちゃんと話、聞いてあげたの?亜優君の話。今の話の中に、亜優君の発言、全然出てきてないんだけど」

『だってっ、言い訳なんて聞きたくない!』

「言い訳?言い訳なの?亜優君が言ったわけじゃないでしょ?矢代さんだかなんだか知らないけど、その女が好きだって言ったわけじゃないじゃない。その女を呼んだことにだって理由があるかもしれない。その理由さえアンタは聞いてあげられないの?」

『……だって!!なんでなの?彼女待っている時に、他の女の子を呼んでる理由なんてっ、…何なの!?しかも抱き合ってたんだよ…!?浮気の言い訳じゃんっ、全部っ!』

「全部アンタの想像じゃない。浮気の言い訳くらい聞いてあげなさいよ。アンタが勘違いしてるだけかもしれないじゃない。その勘違いで嫌いだのバカだの言われる亜優君も可哀そうよ」

『何それ!?亜優が被害者なの!?やっぱり、駄目で邪魔なのはあたしなの!?』

「駄目で邪魔なんて言ってないでしょ?ただ話くらい聞いてあげなさいよってだけよ。友紀、被害妄想が過ぎるよ」

『なっ…被害妄想って…!!』



「まーさんっ、ちょっと、言いすぎだよ!!友紀ちゃんだって、傷ついてるんだから…」

杏梨がまーさんを止めようとする。
でもまーさんは止まらない。

「そうよ、友紀は勝手に傷ついてるだけよ!亜優君の話を聞きもしないで、亜優が浮気したー、すてられたー、嫌いだー、うわーんってなってるだけ!!いったい何歳のガキよ!?」

『ガキって…っ!!』

「待てってば、友紀!!落ちつけよお前ら!!」

次はあたしがかずにいに止められる。



「友紀、ちゃんと亜優の事信じてやれよ。話聞いてやれよ。今回は、お前がガキすぎんだよ」

とーさんが、厳しくそう言った。


〝信じてやれよ〟

その言葉がザクッとあたしの体をえぐりきった気がした。




なんで?
誰か分かってよ
あたしの苦しみ。

あたしこんなに傷ついてる。
あたしこんなに泣いてる。

誰かに気付いてほしい。
優しくしてほしい。



さっき家族って言ってたのは誰?




『もう知らない!!!亜優も皆も、もう知らない!!!!』



あたしはそうとだけ大声で言うと、朝のチャイムが鳴る中鞄を持って学校を出た。