………なんで?

なんで?亜優、え、なんで?

片方は誰?

その可愛い子は誰?

どうして?あたしを待ってるんじゃなかったの?



カバンが肩から流れ、地面にドサッと落ちる。


「あれ――――――――橘さんじゃないですか?」

亜優を抱きしめてる女子が、そういう。



………ああ…

6組の……矢代 瑛美-yashiro emi-さんだ…。

可愛いって、評判の子。


亜優がバッと振り向く。

あたしをみて、「や、ちがうんだ、これは」とか言ってる。




『なに―――やってんの?』

「瑛美も、分かんないんですよー。なんかぁ、あゆくんに、呼ばれたんですっ」

さっき抱きしめていたのを離れたかと思ったら、彼女は亜優の腕をギュッと抱きしめる。



『亜優から………なの?』

「や、ちが」

「なにが違うの?あゆくん。瑛美、確かにあゆくんに呼ばれたよね?」

「矢代、ちょっと黙って」

「えっ、なんで?なんで?あゆくん、なんで瑛美、だまんないといけないの?」


言葉を重ねるたびに、ギュゥギュゥと矢代さんが、亜優の腕に抱きつく。

『あゆくん』――――あたしの知らない呼ばれ方。

亜優の声を度々さえぎる、矢代さんの甲高い声。


「…確かに俺から呼んだけど、けど!」



『―――――――見せつけたかった?』



あたしの口から出た結論は、それだった。