「友紀」

『ん?』


あのキスから。

近くのベンチに座ってツリーを見ていたあたし達。

不意に、亜優に声をかけられる。



亜優は何も言わず、ゆっくり顔を近づけてきた。

『…え!?ちょ、待って、亜優ッ…』

その顔に驚いて、ギュッと目をつぶった。


亜優の手が髪の毛に触れた。

何かされた。

そして



ちゅ



と軽いキスをした。



『…?』

そーっと目を開けると、そこには亜優の笑顔。


今のキスはいったい何?



ポカンとしてるあたしからそんな感情を受け取った亜優は、右のこめかみのあたりをトントン、とやった。

あたしは自分の右のこめかみを確認する。



何か付けられてる。



『……ば、バレッタ?』



編み込みのちょうど最終地点あたりに、いつのまにかバレッタがつけられていた。


「うん。…あ、確認させる前につけちゃってごめんな。見れないじゃん、自分じゃ」

亜優はそう言ってあたしからバレッタをそっとはずした。


『あ、可愛い』

それは赤チェックの柄のリボンのバレッタ。

今のスカートと、マフラーと同じ柄。


「マフラーと、セットでどうかな?って」

亜優は照れたように笑う。



『すごい嬉しい!』

「そ?よかった」

亜優はそう言うと、もう一度あたしにバレッタをつけてくれた。



『じゃぁ、あたしからも…』

あたしはそういって、鞄から青い袋を取り出す。

少し小さめの、青い袋。


「開けていい?」

『もちろん』

受け取った亜優は袋を開け、中からすっと取り出す。


「……ピアス?」

『うん、亜優、穴あるでしょ?』

あたしは自分の耳をトントンとする。


亜優はいつもシンプルなピアスをつけていた。

だからあたしはいつも身につけてほしくて、ピアスにした。

星モチーフの、オシャレなやつ。


『ねぇ亜優、あげといてなんだけど、お願いがあるの』

「ん?」


『今度あたしに穴あけてくれない?そんで…そのもうかたっぽ…欲しいの…』


ペアの出来ないあたしが考えた事。

ワガママなんだろうなぁって事は分かってる。

ピアス一個だけってのもおかしいって分かってる。

でも欲しかった。ペアもの。


「いいよ」

亜優が優しく笑ってくれて、ホッとする。



『あとね、二つ目』

「ん?まだあんの?」

『こ、これ』

あたしはユーフォーキャッチャーで手に入れたお財布を取り出した。

「あーーーっっ!!え、うそ、マジで!?」

『うんっ!マジ。で、あ、あの、ごめん、箱のまんまで…』

だってユーフォーキャッチャーでとったんだもん。


「サンキュ、友紀!」

ピアスの時よりも喜んでる気がするけど…まぁいっか。嬉しいし。



『そんで、最後』

「え?三つ目?」

『うん…目ェ閉じて』


亜優は目を閉じた。



どくんどくん
どくんどくん
どくんどくんどくんどくん


心臓が跳ね上がりそうだったけど
目を閉じてる貴方を愛おしく感じて



あたしは亜優にキスをした



ギュッと抱きついて
唇と唇を重ねた



『これが…あたしからのプレゼント、全て…』

唇を離してあたしがそう言うと、亜優は更にあたしを強く抱きしめた。



「友紀、ちょーかわいい…」

そんな言葉を耳元でささやかれ、ドキっとする。

『…プレゼント、初キスにしたかったのに。先に亜優が奪っちゃうなんて…』

「ばーか、嬉しかったよ」


そういうと亜優はあたしの頬にキスをする。




プレゼントをお互い渡したあたし達。


時が過ぎる中 ツリーを見つめていた。




今までで一番輝いているクリスマス。

これからもずっと亜優の隣に居て、今回を超える時を過ごせますように。