『う…』
「おっ」
『うわあああああーーーーっ!!!』
あたしの目に入っているのは、輝きを追求したような大きいツリー。
あたしの目になんか、全てを映しきれないほどの。
『……キレイ』
「さすがにここまでとは思わなかったな」
寒さとか
緊張とか
不安とか興奮とか楽しさとか
もう全て
何も感じず、ただただ目の前のツリーに目を奪われる。
言葉なんかじゃ表せない感情があふれ出てくる。
『キレイ…』
「な、友紀」
『………』
「友紀?」
『……………』
グイッ
『!?』
ツリーを映していたはずのあたしの目には、亜優が映っていた。
そして『キレイ』と言葉がこぼれていた唇は、簡単に亜優に奪われていた。
『ん…ムゥ…ッ』
いきなりのキスに戸惑う。
だって何気に、あたし達の初キスだし…。
「隣に彼氏がいるのに、そんなにツリーに夢中なの?」
唇が離れて、ツリーの明かりが少し不機嫌な亜優の顔を照らす。
『なぁに?…ヤキモチ?』
「ちげーし」
そういう亜優は完全にヤキモチ焼いていて。
ツリーにヤキモチって…
可愛い。
あたしがクスッと笑うと、亜優は「なんで笑ってんの」と言ってもう一度あたしの唇を奪った。
今度はあたしもちゃんと受け入れた。
とても優しいキスだった。
そんなあたし達を、ツリーは見守っていた。