『今日…俺が無理に誘ったんだし、払おうか?』
チケット売り場にて。
最近やっと、ユウキモードの『俺』に慣れてきた。
「え、いいよ。これ見たかったし!」
そう言って自分の分をちゃっちゃと買うアユミちゃん。
あたしも自分の分をちゃっちゃと買った。
『まだ始まるまで時間あるね』
「そうだね。…ユウキくんは、チュロス派?ポップコーン派?」
『へ?』
とぼけた顔でそう言うと、アユミちゃんはプッ、と笑って
「食べる物の話」
そう言った。
『あー…、なるほど。いつもチュロスのココアだよ。んで、ポップコーンは友達にもらう派。』
「自分で買わないんだ?」
『だって食べきれないって言うしさ。いっつもデッカイの買うんだよ、友達。』
「あー、もう。ちょっと多かったかな~?」
映画の中盤で、いっつもそういう純香。
その合図が出る頃にはあたしもチュロスを食べ終わっていて、いつも食べてあげるのだ。
「ユウキくん?」
『え?』
「何クスクス笑ってるの?」
『あー、思い出し笑い。』
そう言った時
「10時10分からシアター2にて公開の【luckyman】…」
アナウンスが流れた。
「いこっ」
そう言って入口に向かうアユミちゃん。
『うん』
そうとだけ言って、歩いて行った。