「あのっ…芳樹くんっ…いますか?」

4時限目が終わってすぐ…

ドアに一番近い杏梨が、女の子に話しかけられた。

「へ?あ、とーさ…っと…藤堂くんですよね。えっと…」

杏梨が教室を見渡そうとしたところ…

「紗恋!」

後ろからとーさんの声がした。


とーさんが紗恋ちゃんの所へいき、二人でなんか話しだす。


あたしは杏梨と一緒に少しドアから離れたところに机を動かし、そこで昼ご飯を食べることにした。

昼ごはんはクラス内で、のため、あたしは杏梨とよく食べる。

7組だと、よく杏梨といる。

純香達は、放課後とか休み時間とかに一緒に居る。

どっちも居心地がよくて好きだ。

純香も仲イイ子いるし。



杏梨とご飯を食べ始めた位置は、かずにいととーさんがご飯を食べる位置に近かった。

「紗恋ちゃんってあの子かぁ。可愛いな」

一人残されたかずにいがそう言った。

『ホント、可愛いね』

あたしもそういう。

「ちょっとスケッチしたいなぁ…」

杏梨もキラキラした目で言った。


長い髪はフワフワゆるゆるで、前髪は編み込み。

目が大きくて、笑うと可愛い。笑わなくても可愛いけど。

とーさんと並ぶと小さめ。


…そんな風に紗恋ちゃんを見ていると、とーさんと別れ、クラスに戻っていった。

パッと視線を杏梨に戻し、横を見ているとるんるんとしながらとーさんがそこに居た。


『何るんるんしてるの?花の子るんるんなの?』

「お前古いの知ってるなー」

『そりゃどうも』

「見ろっ、デートだよ、デートッ」

ピラリと可愛いチケットを取り出すとーさん。

こっから駅6つ行ったところにある、この前で来たばっかの遊園地だ。

『…なんで昼休みのタイミング?』

「それがさー、可愛いんだよぉ紗恋!」


とーさんが話してくれたのをまとめると…

今日紗恋ちゃんはとーさんと付き合い始めた。

それを知ったクラスメイトのなかに、遊園地のペアチケットが懸賞であたったのだがいらないので誰かに譲ろうと持ってきていた人がいた。

その人が紗恋ちゃんにチケットをあげたのだという。


「それでさ、紗恋に聞いたんだよ。なんで今渡しに来たのか」

『ふんふん。』

「そしたらさぁ、言うんだよ。『これを渡すのもあるんだけど、何よりも…芳樹君に、会いたくてっ』って…可愛い顔でよぉぉぉ!!!」


「俺も彼女欲しいなぁ」

かずにいがそういう。


「ところでさぁ、友紀ちゃんはデートしたことあるの?亜優君と。」


杏梨の質問に、ドキッとした。


「…してないんだな」

とーさんがニヤニヤと笑って言う。