『いや、待ってないよ』

「そっか、よかったー」

ホ、とした様子でアユミちゃんはいつもの席に座る。


「で、今日はどうしたの?あ、この前の漫画!ハイ、貸すよ」



『………今日は、本当に本当に大切な事を、話したいんだ』



いつものユウキとはまるで違う、少し深刻になってしまった声に、アユミちゃんは一瞬戸惑った様だったけどすぐに「分かった」と静かに笑った。





『…秘密があるんだ。本当は何も話さずにこのまま生きていたい程の秘密が』


もしそれで全て上手くいくのなら、あたしはこのまま隠しとおす。

でも、あたしはそこまで器用になれなかった。

片方に偏って、そっちを選んだ。




「…うん」

『でも、話しておきたい。このまま、だまし続けたくないんだ』


そう言うと、アユミちゃんは次は口に出さずに「うん」と頷いた。



『…拒絶してもいいから、ドンびいてもいいから、…聞いてくれる?』



「うん」

アユミちゃんの、わずかな微笑みは、あたしを安心させてくれた。