『なっ、なに、……急に』

「……まじめな、話なんだけど」


ごまかそうとしたあたしを、離さない亜優の目、手。


「……俺分かんない、自信ないよ。ちゃんと友紀に、愛されてる自信がないよ。いつもいつも、俺の方からぶつけてるんじゃないかって、思ってた」

『……亜優』

亜優が、情けない声を出す。

でもあたしだってきっと、情けなくて、…惨めだ。

「……バレンタインの頃は、まだ…、ちゃんと感じてた。両想いだと、思ってた。でも最近は…、最近は、片想いの感覚。…一方通行に思えるんだ」


亜優の言葉で、あたしの心が晴れていく。

霧みたいなもので、必死にごまかしていた本音が、見えてくる。

決してそれが、明るい何かじゃなくても、それがあたしの本音なんだ。



あたしはもう、亜優に恋をしていなかった。

ただつくられた彼女のポジションにいただけだ。

この、普通の恋に甘えていた。

本音を隠して、ごまかして。

あたし、本当は…………。




『ごめんね…、亜優』

あたしの声は、弱くて、細くて、頼りなくて。

でもその中に、小さな決心がちゃんとあった。