『放して!!!』


腕の力を使って

全身の体を使って

出来る限りの声を使って



カズにいからはなれる。




一瞬驚いて、徐々に悲しそうな顔になっていくカズにい。



『………違うんだよ…』


あたしは息を切らしながら、言葉をつづけた。



『かっ、カズにいが、あたしを好きって言ってくれるのは嬉しい。だけど…、あたしはカズにいの事、家族って思ってる。家族、クラスメイト、いいお兄ちゃん…なんだ。』


ごめん、カズにい。

あたし、カズにいを恋人として愛せない。

そう見れないよ。


亜優がいる。

例え亜優と上手くいってなくても、あなたに甘えるなんてできない。

寂しさや不安、もやもやをカズにいを相手にしてはらすなんて出来ないよ。



そんな失礼な事――――できない。



『ごめん、ありがとう。…好きになってくれて、嬉しかった。』



「……分かった」


カズにいはそう言って笑って、あたしの頭をワシャワシャッとなでた。




じわっ、て涙が出そうになる。

でもここは、あたしが泣く所じゃない。

あたしがここで泣いても、何にもならない。

本当に泣きたいのはカズにいの方だから。

…でも、カズにいが笑ってくれるなら、あたしも絶対泣かないよ。


応えるように、笑うから。



『ありがとう』



出来る限り、精一杯の笑顔で。

出来る限り、精一杯の感謝をこめて。



「んま…、頑張れ」

『うん!』




家族だから。

いつまでも、あたし達は家族だから。



崩したくない。

壊したくない。




…ごめんね




ありがとう。