「なんですか?よってたかって、何してるんですか?美鶴先輩」
「きゃっ、ちょっと美鶴っ!名前覚えられてんじゃんッ!」
「なななな、なんであた、あたしの名前…市川君…」
お姉さまは、とても赤面し乙女になりながらそう言う。
カズにいに握られたと所を少し嬉しそうにさすりながら。
「だって美鶴先輩、有名じゃないですか」
「きゃーっ!美鶴ッ、やっぱアンタの頭の良さと足の速さって1年生にも伝わってるんだね!」
「えっ、嘘だッ!そんなぁ…市川君に、知ってもらえるとかァ…」
お姉さま―――美鶴さんは、さらに赤面していった。
「あ、先輩。コイツ…別に何も害を発してはいないので。コレいじめても何にもなりませんよ。俺に用があるなら、言ってくださいね?」
「え…?…!あっ、えっと…あのぉ……ば、バイバイ!!」
好きな人に、後輩に殴りかかってる所を見られた。
美鶴さんは最後、サーッと血の気の引いた様な顔をして去って行った。
きっと、嫌なところ見られちゃったんだろうな。
「………ん」
カズにいが、手をさしのべてくる。
『ありがと…』
あたしは素直に差し出された手を握り、立ちあがった。


