『お、…落ちつい…、た?』

「……うんっ………、ありがとね純香」

「いえいえ」

笑莉に言われて、純香は照れたよう人差し指でポリポリと頬をかいた。


「でも、……なんで?」

菜喜が少しだけ、少ーしだけ、遠慮がちに聞く。

菜喜は何気に、人の恋愛話が好きだったりする。


「………最初は…今朝、の事なんだけど…」

笑莉が、ポツ、ポツとゆっくり話し始めた。



「俊介の…興味がなくなってきてるな、って気付いてた…。でもそれを、認めたくなくて、あたしはずっと…俊介の彼女でいれるだけでいいからって…思ってた…。」


チク


「好きな人の、彼女になれるだけで、充分だと思ってた…。だから、問い詰めたりはしなかったんだけど…うん。あたしはきっと、…彼女っていう事実だけで満足してたんだ。もちろん、俊介の事は大好きだったけど…、俊介からの愛は、あったらそりゃ、嬉しいけど。無くても…いいかなって感じだった」


チクリ


「そんで、今朝…。手は、繋いでたんだけど。一緒に、登校…してたんだけど。会話が無くて。そしたら、俊介が。」


『…しゅ、俊介君が?』


「別れよう、って。」


ドキッ


「『正直言って、告白された時、笑莉の事は気になってたくらいだった。完全に好き、ではなかった…。笑莉の事、その後も、好きだって思ったことはいっぱいあったんだ。でも、…そう思おうって、思ってただけなんだなって今、気付いた。ごめん、笑莉。俺、お前への好きよりも、もっと大きい…その、好きができた。お前よりも、好きな人ができた。身勝手で、悪いんだけどっ、笑莉はすごい良いヤツだとは思ってるけど!ごめん、他のヤツに心揺れてるまま笑莉と付き合うのは、笑莉に失礼だから…。だから別れたい。ごめんな、笑莉がもし、好きな奴とずっといたいって思っているなら、俺はそれに応えられない。でも…それを叶えられる、笑莉にとって大切な人ときっと幸せになれるよ、笑莉は。俺はお前に、そうなってもらいたい』って」



「…長ッ」

「ちょっ、菜喜!そーゆーKYな事言わないでよ!」

「あっ、ごめん」




純香と菜喜のやりとりが、体をスーッと通ってく。




あたしの心臓が、ドクドクとうるさかった。

よりエネルギーを欲しているような、体の全体が速くなるような。




亜優への………興味。

彼女という名の………事実。

告白の時からの………気持ち。

他の………好きな人。

亜優への好きよりも、大きな好き。



あたしの〝癒し〟が思い浮かんでしまった。