「おはよう」

『おっ、おはよ…』

「…元気なくね?」

『ううん、大丈夫だよ』

ニコって笑うと、亜優は「そっか」と笑い返してくれる。

その笑顔にホッとして、手を握って歩き出す。


手を握って歩いたのは、一緒に行き始めてから少し経った頃。

亜優から、そっと。

言葉もなく、そっと。

そのあたたかさに戸惑って、嬉しかった。



それからいつも手を握って歩く。



それが当たり前になってくる。

それが日常になってくる。



あの日の様な戸惑いや

あの日の様な嬉しさが



もう思い出せない。