「ユウキ君はどう思ってるの?」

『え?』

「その友達くんの事。どうすればいいと思ってる?」


なんだか、全てを見透かされている様だ。
あたしは、素直に答えた。


『…謝った方がいいとは、思ってる。でも、「彼はいない」って彼女はハッキリ言ってるし…。その事実は変わらないと思うんだよ。聞かれた場合は言ってもいい。そう言ってるのに……。なんで彼女は彼氏の存在を否定したんだろう?なんで抱き合ってたんだろう?それに、彼女からその男を呼んだみたいなんだよ。その意味は何?そこが分かんなくて…』


「……その友達くん、ちゃんと彼女さんの話は聞いたのかな。」

『え』

「その男を呼んだのも、何か理由があるかもしれない。『彼はいない』って言ったのも、何か理由があるかもしれない。抱き合ってたのも、何か理由があるかもしれない。だったら、その理由をちゃんと聞くべきだと思うな」

『……でも、そんなの浮気の言い訳…じゃないかな』

「それを、そうとらえてもいい。それで、怒ってもいいと思うの。泣いてもいい。好きなんだから。でも、聞くだけは聞いてあげなくちゃって思うんだ。人間、人の話を聞く耳はあるんだから、ね」

『…………そう、かな』

「うん。大丈夫。友達くんは彼女さんの事、すっごい大好きだと思うから。聞くだけでも何か変わると思うよ?」


『…そう、だね』



亜優が好き。
大好き。

だからあたしは泣くし、怒るし、嫌いって言う。

だけど
亜優が大好きだから。
亜優の事が大好きだから。

きっと亜優の事を分かろうとも思える。



そうだよね。



『ありがとう、アユミちゃん』

「いえいえ。友達くんに伝えてね」



そこからは少し、談笑が続いた。



結構長くいたかもしれない。

気付いたらもう4時半だった。



「うそ、すっごい時間たっちゃってるね」

『うん、そろそろ帰らなきゃかな』


そう言って、あたしがたちあがった時。


「待って、ユウキ君ッ」

アユミちゃんに腕を掴まれる。



「コレ」

アユミちゃんから、小さい箱を渡される。


『何?』

パカッ、とあけると…シンプルな、チョコレート。



「ば、バレンタイン、だし…。来る途中、ちょっと買ったんだ。ほら、ネックレスの、お礼」

にこ、て柔らかくアユミちゃんは笑った。




…………可愛いー…。



いやいや、おいおい。


『あ、あ、ありがと、う』

挙動不審になってるあたし。
それを見て、あははって笑ったアユミちゃん。




一日遅れのバレンタインは、そんな笑顔で終わった。