‐ある日‐

「友紀ちゃん、図書室に雛先生の最新の本入ったんだって!次自習だし、行かない?」

『えーっ、ホントに!?雛先生の!?行く行く!』

雛-hina-先生は、あたし達の仲良くなるきっかけの小説家。

恋愛小説が作品の主で、あたしは読むたびにハラハラ、キュンっに惑わされる。


『最新作って言ったら…、なんだろ?長編かな?』

図書室に向かう途中で、雛先生の作品の話をする。

「ん?…いや…、図書室の先生に聞いたら、短編集って言ってたよ?」

『短編集?…あっ、じゃぁ【color】の4って事!?』

【color】というのは短編集のシリーズ。

「そうなるね!私【color】の1だけは読んだんだけど、他はまだ読んだことないんだよね。短編集だから読んでなくても平気だよね?」

『うん、全然大丈夫だよ!あたしはね~、本屋さんに2しか売ってなかったから2は買ったんだけど、1.3は中学の頃図書室で読んだんだ。4、楽しみ!』

「…あっ!そういえば、同じシリーズを何冊か一緒にって言ってたから、2とか3とか入るのかな!じゃぁ私、そっち先借りるから、友紀ちゃん先に4、読んでね!」

『えっ、あ、うん!ありがと!』

そういうと、杏梨はふふっと優しく笑った。

「読んでいいよ」とは言わない。

「読んでね」って言う。

なんだかそこに遠慮とは何かが違う優しさがある。

杏梨はそういう子だ。

あたしはそんな杏梨だから仲良くなれた。


そんな気がした。