「斉藤さんには優也くんの方からきちんと話を通してくれると約束してくれたよ。優也くんもあの女性も、これ以上探られるのは困るだろうからな。来週、結納を返上しに行くから、お前は何も心配するな。」
「わかった・・・。お父さん、ありがとう。」
母は少し涙ぐんでいた。
「お母さん、これでいいの。本当にこれでよかったとあたし思ってるの。」
「そう・・・由佳がそういうなら、それでいいのよ、お母さんは。」
「お父さん、お母さん、本当にごめんね。たくさん心配かけてしまって。
あたしが子供で、何も分かってなかったばっかりに。本当にごめんなさい。」
あたしはソファから立ち上がって、深く深く頭を下げた。
本当に両親に申し訳ない気持ちで一杯だったから。
優也のことも、聡司のことも含めて。
でも、それを口に出して謝ることはできないから、せめて頭だけはきちんと下げたかった。
「もう、いいから・・・早く寝なさい。」
父がそっと言った。
あたしは両親の顔をみることができず、下を向いたままリビングを出、階段を駆け上がった。