あたしはその言葉を聞いた瞬間、聡司の胸に飛び込んでしまった。
聡司はあたしの体を優しく抱きしめて、髪をずっとなでてくれた。
あたしはしばらく目をつぶったまま、その優しい感触に身を任せていた。
少し経って目を開けると、窓の外にはまだ蛍が舞っていた。

「すっかり、フライングだな、これじゃ・・・。
由佳がちゃんと婚約解消するまで、俺は待たなくちゃいけなかったのに。」
聡司の声が、今まで聞いたことないほど近くで、あたしの耳元で、聞こえた。
「聡司は悪くない。あたしが悪いの。」
あたしはささやくように言った。
本当にそうだから。
あたしの思いがあまりにも大きくなりすぎて、
その力にあたしは負けてしまったのだ。