暗闇の中、ふたりは言葉も無く、蛍の群舞を見つめていた。
「聡司、あたし・・・」
「なんだよ、由佳。泣いてんのか。どうしたんだ?」
あたし鼻声で涙に気付いた聡司は、びくんとあたしの方を向いた。
「ううん、あんまり綺麗だから。」
「なんだ、びっくりした・・・」
聡司が安心したように車のシートに体を預ける。
「でも、それだけじゃない。」
聡司があたしの方を向く。
あたりは街灯さえない山の中。聡司の表情は見えない。
「聡司が一緒だから。」