次の日、公園のところに9時5分前に行ってみると、聡司の車はもう来ていた。
「ごめんね、待った?」
助手席に乗りながら訊く。
「さっき着いたところ。じゃ、行こうか。」
あたしがシートベルトをつけるのを確認して、聡司は車を発進させた。
今日流れている曲は、前回とちがって、甘い女性ボーカルが切々とジャズを歌い上げている。
「素敵ね、この人の声。」
聡司は嬉しそうに笑った。
「由佳と俺の耳は似てるんだな、きっと。
俺もこの人好きなんだ。ローラ・フィジィっていって、北欧の出身だったと思う。
日本ではあまりメジャーじゃないけど、好きで良く聴いてるんだ。」
「ふーん・・・。」
ふたりでしばらくローラ・フィジィの声に耳を傾ける。
静かな時間・・・。