「はい。・・・あら、聡司?ちょっとまってね。」
あたしは顔を上げた。
今・・聡司・・・って言った?

玄関が開く音。
「どうしたの?」
と母の声。
そして・・・そして、聞きたかった聡司の声。
「すみません、急に。先日教授から、学会のお土産にイギリスのウイスキーを頂いたので、伯父さんにいかがと思って。僕は飲めない口なので。」
「あら、そうなの。今ちょっと取り込み中なんだけど・・・ちょっと待ってね。」
母がリビングに戻ってきて、父に
「あなた、聡司がイギリスのウイスキーを持ってきてくれたんですって。・・・私思ったんだけど、聡司にも相談してみたらどうかしら?ほら、3人寄れば文殊の知恵っていうじゃない?3人で行き詰ってるんだから、4人で考えてみたらどうかしら?」
父はちょっと考えて、
「そうだな。じゃあ、上がってもらえ。」
と言った。

「すみません。お忙しいところ。」
と聡司は恐縮しながら入ってきた。
「伯父さん、これ、教授の学会のお土産なんです。いい酒らしいんですが、僕は飲めない口なので、もしよかったら召し上がってください。」
とウイスキーを差し出した。
「ほう、これはいいウイスキーだ。わざわざすまないね。」
父はちょっと顔をほころばせた。
「ねえ、聡司。ちょっと聞いて欲しい話があるの。」
母は聡司にアイスティーを出しながら、話を切り出した。
父は聡司が持ってきたウイスキーを黙って飲んでいた。
聡司はうなずきながら聞いていた。