「今日は、予習してみたの。」
あたしはなるべく聡司を意識しないように心がけながら、さりげなく言った。
「え、予習!?よくやったなー。みせて。」
聡司は本当にうれしそうで、まぶしい笑顔であたしのノートを覗き込んだ。
「よく頑張ってる。由佳は、苦手意識が先行してるけど、数学的センスはけっこうあると俺は思うよ。」
ああ、そんな笑顔でみつめられると・・・。
あたしは熱い頬をそっと手で隠しながら、
「そう?」
と弾んだ声で答えた。
「さあ、今日もやるか。」
あたしたちは微笑みあった。


次の日。約束の時間に5分遅れて優也が迎えに来た。
「どこに行く?」
「近いところの海岸に連れて行って。海が見たいの。」
あたしは、海をみながら話をするつもりだった。
「海ね。OK。」
車が走り出した。

海岸に着くと、優也が車を降りようとしたから、あたしは
「ちょっと待って。」
と止めた。
「何?」
「話があるの。中で。」
優也はドアをしめて、運転席に座りなおした。
「話って?」
「・・・単刀直入に言うわ。私たち、婚約解消しましょう。」