4月の終わりに、優也にあってほしいとメールをした。
すぐに返事が返ってきて、ゴールデンウィークの初日に会おうと書かれていた。

明日からゴールデンウィークという前夜。
今夜は聡司が家庭教師にやって来る。
あたしはその日の朝から胸がドキドキして、高鳴る胸を抑えることができなかった。
あたしは、聡司に数学を習いはじめてから、数学の面白さに気付きつつあった。
それは、聡司と同じ世界を共有したいという気持ちの表れだったのかもしれないけれど。

聡司に習っている現在の勉強は、高校数学の1年からの復習と、今ちょうど学校で習っているところとを1時間づつ行っている。
「数学って言うのは、積み重ねの学問なんだ。今やっているところだけ付け焼刃で勉強してもあまり意味がない。」
最初の勉強のとき、聡司はそう言った。
「でも、受験するわけじゃないの。卒業さえできればいいんだもん。」
あたしは、軽く反発した。
聡司はあたしを諭すように、優しく言った。
「由佳。勉強って言うのはインスタントラーメンみたいに簡単に出来上がるものじゃないよ。たとえ卒業まであと1年しか数学を勉強しないとしても、数学で培った物の見方や思考回路は一生役に立つ。僕は、せっかく数学を勉強するからには、やってよかったと思えるように学んで欲しいと思ってるんだ。」
そのときは堅苦しいことを言うなあとおもったけれど、最近になって聡司のいいたいことが少し私にも理解でき始めたような気がする。