あたしたちはいつもの公園までぶらぶら歩いた。
「あたし、どうしたらいいのかわからない。
でも、もう会うのはまずいよね・・・」
亜由美は自分に言い聞かせるように言う。
「亜由美が先生を好きだって言う気持ち、先生は知ってるの?」
「まだ、そういうことは話してない。ただ、色々質問しに行っているうちに親しくなって、話が盛り上がって、出かけようってことになっただけだから。」
「そう・・・。」
あたしはさっきから相槌ばかり打っている気がする。
でも、いいアドバイスなんて思いつかないよ。
だって、人が人を好きになるのには理屈がないことに、自分が気付いたばかりだから。
一般常識で言えば、もう会うのはやめたほうがいいって言うべきだろう。
でも、そんなことはあたしから言われなくても亜由美だって充分わかっているのだ。

そのとき、ふと思った。あの写真の女性は、優也にあたしという婚約者がいることを知らなかったのだろうか、と。
「とにかく、今すぐ心の整理はつかないから・・・しばらくふたりきりにならないようにする。そのうち、心を整理するわ。」
「そうね。とりあえず今のところは・・・。」
亜由美が少し気を取り直してくれたので、あたしはホッとした。
「ねえ、由佳のほうはどうなってるの?」
「あたし?」
「最近へこんでたじゃない・・・。」
「うん、そうね。」
「で?どうしたの。」
「・・・あたし、婚約解消しようかな。」
あたしは思わず発した自分の言葉に自分で驚いた。
でも、言ってすっきりしたことにもっと驚いた。
あたしはずっとこうしたかったのだと今更ながら気付いたのだった。
「えっ、どうして!?あんなに順調だったじゃない。」
亜由美は心底驚いている。
でも、あたしは不思議なほど冷静だった。
「一回なにもかも白紙に戻す必要があるのよ。
今回の婚約は・・・あたしの意思が弱くてひきずられてしまった部分があると思うの。
いまのまま結婚しても、あたし幸せだと思えない。
優也があたしと結婚したい理由も、あたしよくわからないし。」
「それは、由佳のことを好きだからじゃないの?」
「さあ、そうかしら。」
「・・・まだ優也さんには言ってないの?」
まさか、今思いついたとはいえない。
「近いうちに言うわ。次あった時に。」
あたしは決心した。