その日の夜。あたしはベッドに入ってもなかなか寝付けなかった。

あたしは聡司が好きだ。
そのことを認めたことで、すっきりした部分もある。
でも、問題は大きくなったということも事実。

あたしには婚約者がいる・・・。

婚約。どうして婚約なんかしてしまったんだろう。
突き詰めて言えば、優也に好きといわれて、その気になってしまっただけじゃない。
しかも、まだ結婚もしないうちから他の女性の影がちらついているような男に。
あたしは自分の愚かさに腹が立った。
でも、斉藤さんには我が家を助けてもらった恩がある。
21世紀にもなって、「恩」なんて言葉に縛られたくはない。
でも。

聡司・・・。聡司の指。聡司の髪。聡司の背中。聡司の瞳。
どうして、いつから好きになってしまったんだろう。

たったひとつ、はっきりわかっていることがある。
それは、聡司の側にいたい、という熱い衝動。
今すぐにでも、会いにいきたい。
ずっとそばにいたい。
もし、許されるなら・・・。