家に帰って、あたしは写真をつくづくと眺めていた。
似たようなショットの写真があったから、1枚抜いてきたのだ。
彼は写真の数が足りない事に気付くだろうか?
たぶん、気付かないだろうという自信があたしにはあった。
優也はよく言えばおおらか、悪く言えば大雑把で、写真の枚数を数えたりするタイプではない。
とはいえ、かなり気がとがめたけれど、今はそんなことを言っている場合ではなかった。

日付は今年の1月1日と右下に刻印されている。
優也は、12月31日から1月2日まで、大学時代のサークルの友人たちとスキーに行ってくるとあたしに言っていた。
その話を聞いたとき、あたしはちょっとむくれた。
「婚約者と一緒に初詣しようとかいう気持ちはないわけね。」
「まあまあ、そう怒らないでさ。みんなと集まるのは久しぶりなんだ。
仕事で遠くにいっている奴らも多いし。結婚したらずっと一緒にいられるんだから、今回は大目に見てくれよ。」
と懇願する優也の姿が可愛く思えて、あたしは吹きだした。
「うそよ。楽しんできてね。お土産まってまーす。」
「ありがとう」
といって、優也はあたしにキスした。

1月3日、優也はお土産のキーホルダーとお菓子をもってきてくれた。
キーホルダーは、お揃いだと言って、車のキーをつけた自分のキーホルダーをあたしにみせてくれた。

確かにスキーには行ったんだろう。でも、男友達とみんなで行ったわけではないんだ。
この女性と、たぶん二人で・・・。
その写真のなかの女性は、室内で写されていた。
淡いピンクのセーターをきて、ペンションの1室みたいなところでくつろいでいる。
その胸元には、ある有名ブランドのプラチナネックレスが光っている。
それは、昨年秋の新作で、限定品だった。
優也が出張で東京に行ったとき、買っておいたのだといって、クリスマスにプレゼントされたネックレスと同じもの。
そう、あたしと彼女は同じネックレスを見につけていたのだ。