あたしは、さっそく電話をかけた。
「ああ、由佳ちゃん。さっき電話かけたんだけど。」
と優也。
「それはわかってるけど。ねえ、さっき、斉藤さんがうちに来たのよ。」
「うん、その件で電話したんだ。仕事から帰ったら、お袋からおやじがそっちへ行ったって聞いたから。」
「うん。」
「おやじ、何だって?」
「それが・・・」
あたしは急に恥ずかしくなって思わず口ごもった。
「俺が由佳ちゃんと結婚したいって言ってるって、言ったんだろ。」
「そ、そうよ。」
「やっぱり・・・。急にそんなこといわれて、びっくりしただろう。ごめんな。」
「・・・いいけど・・・」
「いや、ゆうべおやじからそろそろ結婚考えろって言われてさ。
あてが無いなら見合いさせるって言われたもんだから。」
「だから、その場しのぎにあたしの名前を出したのね?」
あたしはカチンと来て、語気が強まった。
一瞬、間が空いて、ゆっくりと優也の声が静かに響いた。

「いや、そうじゃない。俺は本当に由佳ちゃんと結婚したいと思ってる。
由佳ちゃんに俺の人生の伴侶になって欲しいんだ。」

あまりの展開にあたしは言葉に詰まった。
「本当は電話なんかでこんな大事な話、したくなかった。ましてや、おやじから先にいわれてしまうなんて、大失態だよな。だけど、ゆうべ見合いの話を出されて、言わざるを得ない状況になってしまったんだ。しかも、おやじのあの性格で、思い立ったら待てないんだよ。俺は行くなって言っていたのに、勝手にそっちに話に行ってしまって。本当にごめん。・・・由佳ちゃん、怒ってる?」
「ううん、怒ってはいないけど・・・」
「俺のこと、どう思ってる?」
「どう、って・・・」
突然の告白にボーっとしている頭を振って、あたしは考えた。
あたしは優也のことをどうおもってるんだろう?
優也はハンサムで、あたし好みの顔をしているし、年上だから頼りにもなる。
一緒にいて楽しい。あたしに気を使って、楽しませようとしてくれる優也は、いつの間にか大切な存在になりつつあった。