「あたしは・・・あたしは、自分の気持ちが、まだ、わかりません。
優ちゃんからも、そんな話聞いたことなかったですし。」
あたしは正直に答えた。
父は、
「そうか。」
とポツリと言った。
「そうだよなあ、なにしろ、まだ高校1年だもんな。」
と斉藤さんは残念そうに言った。
「とにかく、家内がこの話に乗り気でね。家内は人見知りが激しいから、優也がどんなお嫁さん候補を連れてくるかって戦々恐々としていたみたいでね。最近体調も崩してるだろう?それでよけいに不安だったみたいなんだ。それが、昔からよく知ってるあの由佳ちゃんだっていうもんだから、すっかり舞い上がってね。」
斉藤さんは母が出したお茶をすすった。
「まあ、よかったらこれからも優也と仲良くしてやってくれないかな。今日は本当に失礼しました。」
斉藤さんは恐縮しながら帰っていった。

「由佳、どうなってるの?」
斉藤さんが帰るなり、母からの詰問。
「どうなってるって、あたし知らないわよ。べつに告白もされてないし、遊びに連れて行ってくれるっていうから一緒に行っただけよ。行くときもちゃんとお母さんに優ちゃんといくって伝えてたでしょ。」
「それはそうだけど。じゃあ、ふたりの間には何もないのね?」
「あるわけないじゃない。それより、あたし今から優ちゃんに電話してみるわ。
何がなんだかさっぱり訳がわからないんだもん。」
「そうね、それがいいわ。」
あたしは2階へ駆け上がった。
机の上におきっぱなしにしていた携帯電話を取り上げると、不在着信が入っていた。
優也からだった。