近藤道場内にて


「「「やっーーー!とぉーーー!」」」

道場内には稽古中の勇ましい声が響き渡っている。



その奥で心ここに在らずな男性がぼっーと座っていた。


? 「平太、何かあったのですか?ぼっーとして、いつも以上の間抜け面になっていますよ。」



平 「………。えっ?総治なんか言った?」



総 「いえ…。この間抜け面と言っただけです。」



総治と呼ばれた男性は爽やかな笑顔で平太に声をかけた。



平 「…いや、笑いながら言ってること黒いんだけど…。」



総 「そうですか?ぼっーとした間抜け面が面白かったので、つい。」




平太ははっーとため息をつくと、しばらく考え込み、意を決したように話しだした。





平 「…実は…俺、見つけたかもしんねぇ。あいつを…。

今日、大学の幕末研究部に入部希望で来たんだ。一目見て気づいた。声を聞いて泣きそうになったよ…。




…けど、あいつは覚えていなかった…俺のこと…。」




平太は少し目を赤くして俯いた。





総 「…良かったじゃないですか。再会出来たのだから。

忘れているのなら、また振り向かせれば良い。…自信ないのですか?」





平 「そっそんなこと…。…そうだよな。よし、俺頑張るよ。おっしゃー!」


平太は気合いを入れると、稽古中の仲間のもとへ駆け出した。



総 「…君は出会えたのだから幸せだよ。私はいつあなたに再会できるのでしょうか…。」



一人呟いた総治の言葉は誰の耳にも届くことはなかった…。