夏の日の部活が終わり、みんなが帰っていく。ただでさえつかれている時に蝉のうるささで止めを刺される。

忘れられたボールかごを片付ける。
「手伝って」たった一言が言えない自分に嫌気がさした。
一人で持つには重すぎて。
バランスを崩して階段からぶちまけてしまった。
ボールがいろんなところへとんでいく。
自分が情けなくて泣きたくなる。
拾おうと立ち上がると

「大丈夫ですか?」

低くて、優しい、つつみこむみたいな声だった。

振り返ると知らない男子がいた。
その人は何も言わずボールを拾うのを手伝ってくれた。

動くたびにサラサラ揺れる黒髪に、細すぎるほど繊細な指。
バスケの練習着から見える鎖骨が、妙に色っぽかった。