「じゃーね」



そう言って須嶋くんがあたしに背を向ける



だけど、





また振り返った






「幸せに、なれよ」








……シアワセ



それは



須嶋くんが一番




求めてたもの





「それが、俺の最後の願い」




目を細めて



須嶋くんは本当に優しく微笑むようになった



「須嶋くんも」




「……あ、俺が願ったら叶わないんだったな」



そうやって次は


また



あの懐かしい笑い顔




幸せになる、とは




言ってくれないんだね





「そんなことないよ」



「……うん、ゆきちゃんは…幸せにならないといけない人だよ」




「…………」



須嶋くんもだよ



って言おうとして




止めた






あたしは親がまだ生きてて



ちゃんと高校も卒業して



その後も友達との関係は続いてる





それを



幸せというなら




もう




須嶋くんは







「じゃ」



これがもう



最後の言葉だとわかる




最後に何か言うことは



何も思いつかない





暗闇に消えていく彼の背中は




まるであのときのよう





なんだ



この前、悠斗くんが去って行く背中が須嶋くんに似てると思ったけど



全然



そんなことなかった




あたしが勝手にそう思いたかったのかな







ただ



須嶋くんの背中が見えなくなるまで



ずっと見つめていたけど





もう



あのときのような気持ちはなかった