「まなみん、ありがとう」



「えー?何がよ」


2人で学校に向かいながら



ふふ、と笑うまなみんが横にいて言う




「あたしがゆきと一緒にいたかっただけだから」




ううん


わかってるよ



あたしが一人にならないように



悲しむ時間を少しでも無くすために




ごめんね



あたしがいつまでも暗い顔してるから



放っておけなかったんだよね




その気持ちは、あたしもすごくわかる


でも



今は、周りの人にまで目を向けられないかもしれない




まだ自分のことだけで精一杯だ





「ゆっくりでいいんだよ、ゆき」



「…うん、ありがと」



「ゆきみたいないい人が、幸せになれないわけないんだから。なれなかったらあたしは神様を絞め殺す!」



「…は、はは…」




まなみん…顔が悪魔だ



でも、嬉しかった




幸せだよあたし



まなみんと出会えて



もう、幸せなんだ




これ以上なんて望まないよ






冬の朝はすごく寒くて



急いで準備しながら耳に聞こえてきた天気予報では



今日は特に冷え込むでしょう



って言ってた




どうりで、道が少し霧がかっているわけだ






なのにね



なんでたろう




昨日、寒いと言いながら一人で学校に行っていたときよりも




今のほうがすごく



すごく



温かいんだよ





まなみんが隣で笑って



口から出た白い息が



あたしの白い息と交じって


空へと登っていく








傷は



癒えないわけじゃないよ




まだ、あたしの心は傷だらけだけど




今みたいに、一瞬でも忘れて笑えるなら



いつか



必ず、全てを忘れて




綺麗な想い出にできる日が来るはずだから







だって




須嶋くんは行ってしまったけど



絶対に離れて行かない人は




今も隣で




笑ってくれてる