「実はね、教科書を破いちゃってさ……ほらね? んふっ」


 おどけながら、可哀想な教科書をコッソリと見せた。

 あ、カツ呆れてる。思いっきり「はぁー」とタメ息をつかれたし。


「あのなぁ。その力を今使わないで、次の体育の授業で使えよ。この、馬鹿ヂカラ」

「だ……だって、お父さんがさぁー」

「あーもう、またかよ。
『お父さんが、お父さんが』って、朝からそればっか。お前の気持ちはわかるけど、教科書には罪はないだろうが」


 そりゃあ、ごもっともですけれども……でも、


「しょうがないじゃない! ムカついてんだからぁ! ……あ」


 周りの人々が、一斉にこっちを見た。

 し、しまったぁ。怒りで我を忘れて大きい声を出しちゃったよ。


「っ、このバカッ! 声がデカいっ!」


 げっ!


「ちょっとカツ! 一緒になって大きい声出したら、先生にバレちゃうでしょ! シーッ!」

「お前が言うな! しかも、その『シーッ!』もデカいんだよっ!」

「もうっ! だからぁ、声が大きいってばぁ!」

「だから、お前が言うなって!」

「コラーッ! そこの幼なじみコンビ!!
 トークをしてるなら、廊下に立ってなさいっ!!」


 ひぃ! やっば、先生にバレちゃった。怒ってる怒ってる。恐ろしや恐ろしや。

 まぁ、こんだけ騒げば当然ですよね。いつの間にかクラス中の視線を二人じめしてるし。ねぇ、先生。

 というわけで私とカツは、みんなに笑われながら、そして先生に睨まれながらトボトボと歩いていき、廊下へと出ていきましたとさ。