「ふっ……私に恐れをなして逃げたんじゃないの?」


 私は気どって、髪をさらっと流した。


「口の周りにソースつけまくりの女に、誰が恐れをなすんだよ」

「うっ……」


 カツからコールドなツッコミ。慌てて口の周りを拭いた。ムカつくけど……そのとおりすぎて言い返せない。


「いやぁしかし、まさか咲華の方から会おうとしてくれるなんて……お父さん、嬉しいよ」


 お父さんは白いナフキンで、涙を拭いた。

 って、おいおいおい。何カンドーしてんの。


「ちょっと、勘違いしないでよね。
 別に彼女とのことを認めたワケじゃないんだから。
 私は、お父さんを奪った泥棒猫がどんなヤツか知りたいだけですぅ」

「泥棒猫って、昼ドラかよ」


 カツが、ピザを食べながらツッコんだ。


「カツ、変なところツッコまないでよ。
 とにかく、私はどんな人でも絶対認めないからねっ」


 娘の頑とした態度に、さすがのお父さんも「まいったなぁ」と、苦笑いをしていた。

 私のお父さんを、よその彼女なんかに取られてたまるかっ!