「こんのっ……裏切り者があぁっ!!」
「わっ、咲華っ! イスを倒して立つんじゃない! 気に入ってるのに、壊れるだろう!」
怒りが頂点に達してるってのに、こんな時までにイスを気遣いやがって!
「黙れぇっ! 歯をむき出しにして怒りをあらわにしたくなるこの気持ち、あなたにわかりますか!?
急に彼女と再婚って、マジで信じられないんだけど! 私の知らないところで、女作りやがって!
これでも……くらえぇっ!!」
ソファーに駆けつけてクッションをつかみとり、素早く投げつけた!
「うわぷっ!」
イエス! 見事、顔面にヒーット!
「おっ、落ちつこうっ、咲華! な?」
「これが落ちついていられようかっ!!」
こんちくしょー! もう一発お見舞いしてやるーっ!
二発目のクッションを掴んで、投げる体制に入った。
「ストップ! お父さんが悪かった! 確かにちょっと舞い上がり過ぎたよな? お前の気持ちを考えずに、いきなりこんな話をしてしまって、ほんと悪かったっ!」
二発目を恐れたお父さんは、焦って困った様子で謝ってきた。
けど当然ながら、そんなんで私の気が収まるわけがないっつーの!!
悲しくて悔しくて……死ぬほどたまらないっつーのぉー!!
私はね、お父さんのために、家事も一生懸命覚えて、料理だって、中学からずーっと料理部に入り続けてまで腕を上げてきたのに……
アッサリと他の女に寝返りやがって!!
私はお母さんじゃないけど、なんか浮気された気分だよぉ!

