そこは、ずっと昔から俺の住む街から見えていた
空に浮かぶ小惑星のような場所。

昼間は青空に溶け込むもう一つの地球のように、
夜は沢山の宝石を硝子玉の中に閉じ込めた芸術品のように見える美しい場所。


交通手段は俺が今乗っている黒猫だけ。

だから昔は、この街に沢山の観光客が押し寄せて凄く栄えていたらしい。

黒猫のある駅から、地上を走る電車の駅まで色んなお店が並び、その周辺には遠くから来る人のための宿泊施設が次々と建てられた。


どの季節も美しいあの場所は、オフシーズンなんてなく、街には常に人が溢れていた。
もちろん、観光客目当ての商売人も多く移り住むようになったり、
いつもBleu de jardinを見上げていたいなんて言い出す人達も出てきて
街はどんどん大きくなった。


そう時間も経たないうちにこの街は都市になるんじゃないか、なんて言われていた時に
Bleu de jardinに訪れていた人々は冷静になってしまった。


そこは幻想郷。
現実世界とは相容れないことに気が付いてしまった。