空は青空。

飛ぶ鳥は色とりどり。

太陽は眩しくて、暖かくて。

木々は青々と繁る。

街並みは白亜。
中心には一際高い時計塔。

一時間刻むごとに沢山の人形が出てきて踊って、音楽を奏でて時を知らせる。

それと、どこまでも広がる海。



これが私の住む世界、『blue de jarden』。

正しくは、私のいる場所から見える世界。


窓越しの世界。


私がいるこの場所は『blue de jarden』の一番奥。
高台の上、時計塔よりは低いけれどこの世界を一望できる場所。『鳥籠』と呼ばれているらしい。


気が付いたときには私はここにいた。


誰に決められたかは分からないけれど、私はここを出てはいけない。
「何故」とは聞いてはいけない。そういうものだと決まっているの。

私はここから出られない。その代わり、望むものは何だって手に入った。

読みたい本も。食べてみたい甘いお菓子も。窓の外に見える小鳥達のように
鮮やかなドレスも。何だって、どれくらいでも。

でもね、何を貰っても私の心はいつもぽっかりと穴の開いたみたいに満ち足りることはなかった。

理由は分からない。私には分からないことだらけ。


本物には触れられない知識だけの世界は、私に真実を教えてはくれない。