一言、医者やってるんだから親父か、母さんに相談すれば良かったんだけど
そんな時間すら、奪われたくなくて、闇雲に練習を詰め込んだ。






そんな俺の膝は……
練習中に強烈な痛みと共に動かせなくなる。







「託実」

「託実、お前どうしたんだよ」





智樹先輩や、大樹先輩。
そして久信先輩に、稔。


四人の声が耳に届きながら、
俺は左膝を抑えて、グラウンドでうずくまってた。




「託実、左膝か?」


智樹先輩に問いかけられるままに、苦痛に顔を歪めながら
何とか頷く俺。




「大樹、附属病院へ連絡。
 後、智樹、グランに一報いれておいて。

 俺は顧問に連絡するから」



久信先輩の声がすぐに遠ざかって、
その後、慌てて姿を見せたのは大学医学部校舎から駆けつけた裕真兄さんと、
俺のグランデある一綺兄さん。



「智樹、大樹、稔。

 後は私たちが交代するから、君たちは練習に戻りなさい。
 全国大会も間近、今の実力を出し切って後悔のないようにしてくださいね」


一綺兄さんが声をかけると三人は兄さんに一礼をして、
その場を離れていく。


裕真兄さんは、俺の傍で膝の様子を見ながら

「託実、靭帯……損傷してるかもしれない」

っと小さく言葉にする、俺にとっては最悪の結末。




「テーピングで応急処置だけして病院に運ぶから。
 こっちに来る時に、父に連絡しておいたよ」



裕真兄さんが言う父は、俺の父のお兄さん。
政成【まさなり】伯父さん。


附属病院の病院長を任されてる存在。



俺は裕真兄さんになされるがままの状態で、
二人の兄さんたちによって病院へと送り届けられ、
診察室へと連れ込まれた。






プレッシャーと、
俺自身が弱さが招いた一瞬の過ち。




自らの愚かさを知った時、
何もかもが手遅れだと思い知った夏。






結果を出せない重圧だけが、
俺の世界を闇色に落としていった。