8時前。

俺は母さんに手渡された、
手術のための黒っぽいパンツに着替えさせられる。


無駄に緊張感だけが走りやがる。


そのまま松川先生が姿を見せて、
俺の手術をする足に印をつけて、手首にはめられたバーコードタグにも『右』と記載される。


準備だけが過ぎて8時。
母さんに促されて、車椅子へと移動する。


何時の間にか集まってた、一綺兄さん・裕真兄さん・親父に伯母さんたち。


「託実、松川先生に許可貰ったから今日見学させて貰うから。
 オペ室で」


裕真兄さんはそう言うと、先に何処かへと移動を始める。


「託実くん……手術頑張って」


俺たちもゾロゾロと移動を始めた時、
背後から、アイツの声が聞こえた。


「まぁな、余裕だ」


なんて虚勢を張りつつ、それを自己暗示に何度も
心の中で唱え続ける。



車椅子はゆっくりと母さんに押されて、オペ室の方へ。



一綺兄さんたちは、家族用の控室に案内されて
俺はオペ室からの迎えによって奥の部屋へと連れていかれた。



20室くらいありそうなオペ室の前には、
それぞれに朝一から手術をうける奴らっぽい人間が待機して
それぞれの入室手続き。

俺も手首のバーコードをスキャンされて、ゆっくりと中に通された。


想像していたより高い手術台。
無影灯他、いろんな機械が周囲に完備されている。

手術台に自分から上がって横になると、その後は部分麻酔やら何やら。


その度に、オペ室に居る医者が説明してくれるものの
痛いものは痛い。

けど逃げだすわけも行かず、何とかたえてる間に
少しずつ感覚が麻痺しているのか、不思議な感覚。


感覚があるように思うのに、触られても殆どわからない。

そのまま説明されるように何かを順番に付けられてる間に
俺の意識は眠りについてしまった。


気が付いた時には、お昼をまわった後。
体の方は、管だらけ。

下半身の感覚は今も不思議なまま、
午後からの回診で、松川先生によって手術が成功したことと
晩御飯から出るよっとあり難い情報を手に入れた。




手術から二日後。

俺は今度は退院に向けての、
本格的なリハビリが始まる。




リハビリのメニューは、術前メニューにプラスして
幾つかのセットが組まれてた。




思い通りに動かせない足は苦痛だったけど、
一週間を過ぎたころから、
病院内を松葉づえを一切なしで歩行するように松川先生から告げられる。