八月。

松川先生に最終警告を受けた俺は、
親父たちの前で、治療に同意した。

ズルズルと俺自身の弱さで、
なんだかんだと理由を付けて、治療を拒んできたけれど
これ以上は、先延ばしに出来ない空気を感じだ。


親父や母さんを困らせるだけ……
そんな軽い気持ちだった、
俺の時間はその瞬間音を立てて崩れた。



全ては俺の不注意。
俺の軽はずみな行動。


その責任を取る時が来た……、
そんな風に自分に言い聞かせた。





「何見てるの?

 それに……私、知ってるんだから。

 入院したその日から、
 君は一切治療してない。

 拒絶して、迷惑かけて。
 それでも……ちやほやされて。

 甘えないで!!

 託実くん、君は幸せじゃない?

 やりたいことを少しでも経験して
 楽しい時間を過ごしてる。

 手術したら治るんでしょ?

 だったら早く治して、
 ここから早く出て行きなさいよ。

 私に平穏な時間を返してよ。

 
 私は……どれだけ治療を続けても、
 手術を頑張っても、
 自由に慣れない、一時的に症状を緩和させるだけ。

 どれだけ頑張っても、自由に慣れないの。

 だけど君は違うでしょ」



治療を決めて病室に戻ってきた後、
俺の顔を見るや、怒鳴り始めたアイツ。


ウザい、煩い、俺の事情も知らないで。


そんなイライラを募らせながら、
売り言葉と買い言葉。

反撃の言葉を思いめぐらせていた時、
目の前のアイツは、呼吸が荒くなって真っ青になって
その場に倒れた。




一瞬の出来事で俺自身、
アイツの身に何が起きたかなんてわからなかった。