「それでさぁ、託実。

 あの昂燿の飯塚がさ……」



次から次へとマシンガントークが炸裂していく中、
託実君はその話題一つ一つに、
返事をしながら楽しそうに過ごしてた。




そんな空間が、
別次元にも感じられて。





『この子は
 入院が短いことを知ってる……』





そんな風に妬んでる私が存在した。




私には見舞いに来てくれる友達なんて居ないし、
笑いかけてくれる家族も来ない。


お見舞いに来る両親は疲れた顔。



そして……私の大切な天使は……
モモは、一度も来たことがにない。



託実君を取り巻く世界が羨ましいと思う自分。
そんな風には思いたくないと必死に言い聞かせてる自分。





いろんな思いが交錯して、
私をイラつかせていく。







「って言うか、託実。
 そろそろ、あの子紹介してよ。

 君も良かったら、一緒に食べない?
 何処の学校?」 




そう言いながら、託実のベッドサイドにいた男の子が
手に、ペットボトルのジュースと、スナック菓子を手にして
目の前に差し出される。





そうやって親切から差し出される
スナック菓子も、甘い炭酸飲料も、
今の私には……必要ないもの。





「そんなものいらない」




このまま自分の病室に居ることに
耐えられなくなって、私は必死にベッドから体を起こすと、
ベッドサイドの車椅子を引き寄せて、
ゆっくりと乗り移ると、車輪をまわして病室へと出て行った。




『何、託実。
 あの子、感じ悪い。

 託実、あんな子と一緒の病室なの?』

『えぇー、ウザくない?
 あの子。

 暗いし、礼儀知らないし。
 うちらの親切、無にしてさ』





言いたい放題、
悪口言ってる声が聞こえてくる。



言いたいなら
好きに言えばいい。



悪いのは私でいいから。






憧れは、何時も幻想に終わって
私の世界を鮮やかに
解き放つことはなくて。




だけど今も憧れ続ける。




鮮やかに映る、
そんな世界に……。