そうやって書きたかったのに、配置を見誤った私の文字は
アリガトの4文字までしか入らず、

ゴメンナサイにスペースを取りすぎた為、
チョコレートの右隅に、小さく読めるか読めないかのヨレヨレ具合で綴られた【アリガト】が精一杯だった。



大きなため息の後、
左下には、さっき作った、歪な葉っぱが堂本さんによってあしらわれて、
メッセージの入ったチョコレートに接続される。



そうやって作られたチョコレートは、綺麗に箱へと詰められて可愛らしくラッピングされた。

堂崎さんが帰った後、携帯電話でお母さんにメールを送る。





お母さんへ

急なお願いだけど聞いてください。
1月が託実の誕生日だったの。 

マフラーと、毛糸か刺繍糸それと針を持ってきてください。


理佳







病室から外に出られない私は、プレゼントを買いに行くことすら出来ないから
その代わりに、買い物に行って貰えそうな人に頼むしかなかった。


その日の夕方には、お父さんとお母さんが病室に顔を出してくれて、
買ってきた、黒のマフラーと白い刺繍糸。

そして刺繍針。


そのマフラーの隅っこに、お母さんに教えて貰いながら
TAKUMIの名前を、刺繍で縫いとめた。




そうやって何とか、皆に手伝って貰って完成した
初めての贈り物は、宗成先生を通して託実に届くようにお願いした。




託実に逢いたい。

だけど……今の自分を見てほしくないつて思う
私にも芽生えた女心。


心の中で求め続ける想いは、
今出来る精一杯で、初めての贈り物に託して……。