「演奏、聴かせて貰ってた。
 凄いね……私が完成させた編曲。

 あんな風に仕上げてくれて。

 託実も凄い、ベース初めてまだそんな時間経ってないのに
 宣言通り、私の編曲した曲一緒に演奏してくれてる」


素直に零れ出た。


こうやって聴かせてくれた演奏が、
逢えなかった時間も、託実が一生懸命頑張ってた証なんだと教えてくれる。




「まだまだ。
 俺がバンドの足引っ張ってるのはわかってる。

 けど……絶対、学院祭では成功させてやっから、
 理佳には特等席、運営委員特権で用意しといてやる。

 学院祭の日は、裕兄さんも帰国するから
 親父、外出許可出せよな」



そうやってまた私が外に出れる機会を
増やそうと、託実は宗成先生に声をかける。



「先生……私も行ってみたい……。

 悧羅って、モモも海神だけど通ってるの。
 託実の学校、見てみたいから……」



サンドウィッチを一切れ、食べ終えて飲み下すと
託実の後に自分の言葉で、想いを伝える。



こんなこと……冴香先生に逢いたいって、
我儘をいったその時以来……。



「わかった……。
 だったら理佳ちゃんは、このまま学院祭の当日まで
 体調を安定させること。

 託実、お前も理佳ちゃんにストレスを与えるな。
 彼女にとってのストレスは、何時命取りとなるかわからない。

 毎日、理佳ちゃんを安心させてやれ。
 バカ息子」



そう言って、宗成先生は託実の背中をバシっと叩いた。



「理佳ちゃん、二時間したら迎えに来る。
 先生は上で妹と話してる。

 体調が崩れたら、このボタンをすぐに押しなさい」


そう言って、お遊戯室に行ったときに手渡されるものと同じものを
渡されて首から下げた。







その後、久しぶりに託実とゆっくり会話をして、
隆雪君とも話して、心の中のモヤモヤガゆっくりと晴れていく。



Ansyalと呼ばれていた、隆雪君の夢のバンドは
再び、ガラスの向こう側へと集まって何度も何度も、注意されながら
演奏を仕上げていく。







学院祭のLIVEに向かって、
真っ直ぐに突き進んでいく、そんなパワーを感じながら
私の中にも、熱くなる思いを感じた。