「理佳、美加に挨拶してやってよ」



託実くんの無茶ぶりに戸惑いながら、
私は、【好き】の文字が気になって、
まともに託実くんの顔を見れなくなってたし、
過剰にその言葉に反応過ぎて、
赤面していくのが自分でもわかった。



「託実、祝両想い」



茶化すように親友に告げる宮向井君の声。


「託実、もういいわよ。

 託実があの子を好きなのはわかったから。
 それで、託実は私に何をさせたいの?

 あの子の女友達がどうとかって、
 振られたけど、それって私の問題じゃなくて
 あの子でしょ?

 
 友達って言うのには、時間がかかるかも知れないけど
 託実を好きな者同士、
 ライバルくらいにはなれるかも知れないわね」
 
 


そう言って堂崎さんと紹介された女の子は、
私の真正面に立った。


差し出される手。




前回握手を求められたときは、
憎悪が感じられた。



だけど今は……そんな嫌な気持ちは漂ってない。


ゆっくりと差し出された手を握り返すと彼女は、


「ごめん。水分制限あったの知らなくて。
 でもアンタも悪いんだから。

 ちゃんと情報は伝えて貰わないと、差し出したもの【いらない】って
 拒絶だけされて、いい思いするわけないでしょ。

 【水分制限あるから飲めないの。気持ちだけ貰っとく】っとかさ
 もう少し周囲の気持ち考えたら?」



そんな風に私を諭してくれた美加さん。
病院外の初めて出来た女友達。



私の過去を知る存在。
そして私に足りないものを諭してくれた人。



その後、私は初めて『外の世界の人』と30分ほどの時間、
初めての会話を楽しんだ。



18歳を過ぎた私。


18歳を過ぎたあの日、
もう一度、命のを神様から頂いた。




そんな風に思ってもいいのかな?





数多くある罪悪感。




家族のことに関しては、
これから先も、自分を許すことは出来ないかもしれないけど……
18歳を過ぎた今も……命のタイムリミットを越えて生き続けてる私の罪悪感は、
今、昇華してもいいのかな……なんて、
ほんの少し考え方を転換することが出来た。