小学校。



私は聖フローシア学院の初等部へと入学が決まった。


私たちのいる地域では、
神前悧羅学院と並んで、有名な学校に通えるようになったのは
三歳から始めたピアノの成果。




楽しい学校生活がずっと続くと思ってたのに、
神様はとても意地悪で、その年に胸を押さえて倒れたまま
病院での生活が続いている。





友達を作って、学校で楽しく過ごす私の夢は
その瞬間に崩れ去る。



最初のうちはお見舞いに来てくれてたクラスの皆も、
入院が半年以上になると、次第に訪問する存在が減っていく。



私の病室に顔を出してくれるようになったのは、
心配性のお父さんとお母さん。


妹のモモは、
まだ幼いからという理由で病院に連れてこられることはなかった。


多分、お母さんとお父さんの愛情を沢山受け取りたい大切な時期のはずなのに、
モモの大切な二人は、何時も私の傍。



そんな心の苦しさが、私と両親の距離を遠ざけていく。



私の心が、これ以上傷つかないようにと一つ、
また一つと心を殺してその機能を麻痺させていく。




フローシアの初等部一年生。

通学できないままに、
時間だけが過ぎて私は……退学。



本来なら、市立の小学校に通う必要があるんだけど
それすらも入院中の私には出来なくて、
病院の院内学級で勉強するようになる。





小学生で二人、中学生で二人。


四人の先生が、
丁寧に小児科病棟の一角で勉強を教えてくれる。


そしてそれとは別に、
希望した習い事も出来るのがこの病院のシステム。


私はどんな形になっても、ピアノは続けたかった。


だからこそ、今もピアノだけにしがみ付くように
この時間に執着してる。




いつ死んでもいいって、罪の意識を感じるのに
ピアノだけは手放すことが出来ない私自身。



思う様にコントロールできない私の心。







レクイエムを何度も何度も、無心に繰り返しながら演奏を終わった後
私は空っぽに近い状態で、フラフラになりながら手探りで、
鞄の中から楽譜を取り出す。