「いってきます。」

玄関に暗い声が響く。

誰も返事はしない・・・。

優衣(ユイ)はトボトボと何時もの道を歩く。

ウィーン―

ボスッ―鞄を椅子にほり投げる。
ここは、近所のコインランドリー。
学校が嫌いなわけじゃない。
むしろ、友達と居れる時間が多く、部活の先輩もいる、学校が好きだ。

だけど、何時からか、こんなことが何時も続いている。

カチッ-カチッ-、、、、

時計が時を刻む。
9時25分―家を出たのが7時48分・・・。
コインランドリーでは、どれだけの人が出入りしたのか良く分からない。

けれど、来る人、来る人、優衣のことを意識するわけでもなく、ただただ、時間が過ぎた。

家には、離婚したはずの父がいる。
けれど、9時30分には必ず、どこかに行く。
その時間を見計い、鞄を乱暴に背負い、優衣は家にかえる。

優衣は何時も疑問に思っていた。
どうして、二年前に離婚した父がいまだ、家にいるのだろうか・・・?

そんなことを考えつつ、家に着く。
家には誰も居ない―いるはずがない。

「ハァ―今日も学校・・・」

制服を、シュルシュルと器用に脱ぎ、Tシャツ一枚になり、兄の部屋へ篭る。
兄の部屋は、一番落ち着くところだ。
兄も優衣も所謂、-オタク-と言うものだ。

カチャ、カチャ・・・・
PS2を弄る手がCDコンポにかかる。

~♪~♯~♭~

「なにこれ・・・聞いたことない、インディーズ?」
その歌は、暗いけれど、どこか懐かしい歌・・・。

そのCDは物語を語るように、優しい歌声、悲しい歌声、怒りの歌声―。

「凄い、声優さんってこんな事してるんだ。」

優衣は猫のコマメを撫でながら、小さく微笑んだ―。