職員室には、テストの監視担当から外れている先生が数人残っていた。

 担任の谷先生も自分の席に座ってお茶を飲んでいた。

 その姿はさながら、縁側で日光浴を楽しむおじいちゃんのようだった。

 谷先生はかなりの年配先生だからだ。



 江口先生はその斜め後ろの席。

 私たちが入ってくるのを見て、おぉ、と片手を上げる。


「悪いな、篠崎。安原も来てくれたか」

「はい。私たちだけで大丈夫でしょうか?」

「ああ、ちょっと探し物をして欲しいだけだからな」


 言いつつ何かを書いたメモを洋子に渡す。

 手のひらサイズの白い紙には、年月日と簡単な配置図のようなものが描かれていた。



「うちの吹奏楽部が六年前に、夏のコンクールで全国大会までいったのは知ってるな?」

「もちろんです。だから私、この高校を選んだんですから」と洋子が胸を張る。


「その年の定期演奏会、先生観に行ったんだよ。構成がとっても素晴らしくてね。

資料が残っているはずなんだが、準備室と音楽室を探しても見つからないんだ。

他の先生方に聞いて回ったら、たぶん資料整理の時に紛れて片づけたんじゃないかって言われてな」



 江口先生は私たちと同じ新参者。この春赴任して来たばかりなのだ。