普段この教室の傍を通っても別段何とも思わないけれど、テスト中ということもあり静まり返った辺りはひどく心細い。

 生徒たちの熱気がないためか、ほんのり寒ささえ覚えた。

 それは、隣に立つ洋子も同じようで。



「……なんかちょっと、怖いね」

「うん。いつもは三年校舎を通って職員室に行くもんね。その方が早いし」

「早く行こっか。先生、待ってるだろうし」


 私が頷くと、洋子が先に歩き出した。

 後に続こうとして、一度だけちらと振り返って視聴覚室を見る。

 他の教室とは違って、分厚いカーテンがひかれた窓の向こうは真っ暗闇のようで……



 その時、ふわとカーテンが揺れた。



 え、という声と共に心臓が跳ね上がる。思わず足を止めてしまう。


 しばらくじっと、視聴覚室の窓を見つめた。けれど、カーテンは微動だにしない。



「気のせい、だったのかな……」

「理香、早くー」



 細められた声で呼ばれて、私は逃げるようにして洋子の後を追った。