視聴覚室

「だから、怖かっただろうけど、昨日どんな状況だったのか詳しく教えて欲しいの。今わかっていることは少なすぎるから、どんな情報でも有り難いの」


 洋子は体の震えはおさまらないものの、涙は次第に枯れてきたようだった。

 かぶりを何度か振っていたけれど、諦めたのか決心したのか、小さく頷いて口を開く。


「……はじめは、何もなかったの。何も聞こえないし、何も見えないし。また、手が見えたらどうしようって怖かったけど、本当になんにもなくて……」


 洋子が私に電話をくれたのは、視聴覚室へ向かう途中の廊下だったそうだ。

 事情を説明して、何かあった時は電話越しにでも伝えられたらと思ったらしい。

 大半は、怖さを紛らわすためだったとか。


「で、とりあえず今日のところはいいかなって思ったの。今は何もなかったですよって、先輩たちに報告して帰ろうって。その時――」


 鞄の中でメロディが鳴り出した。

 携帯を変えても着信音はそのままだった『君の瞳に恋してる』。

 恋人である近藤くんからの着信だ。


「もう驚いちゃって。恐る恐るって感じの時だったから余計に震えあがっちゃったの。だから、急いで電話に出ようと思って鞄をあさってたら、ガタッて後ろで音がして……それで、振り返ったら……」