視聴覚室

 洋子の家の前へ辿り着くと、一度電話をかけてみた。

 一分ほど鳴らし続けたけれど出てくれない。仕方なく、私は呼び鈴を鳴らして声をかけた。


「あら、理香ちゃん。ごめんなさいね、洋子ったら今日調子が悪いみたいで、昨日帰ってきてから部屋に閉じこもったままなのよ」


 困ったわね、といった風に洋子のお母さんが頬に手をあてため息をひとつ。

 私は、会えなくてもいいですからと断りを入れて、家の中へ上がらせてもらった。

 洋子の部屋は二階の一番奥。

 何度か来たことのある洋子の家は、今や勝手知ったるなんとやら。

 階段を上がって部屋の前まで行くと、扉越しに声をかけた。


「……洋子。ねぇ、聞こえる? 私、理香だよ」


 中からは物音ひとつしない。寝ているかもしれなかった。


「高志先輩から聞いたよ。ごめん……ごめんね、洋子。私が居なかったばっかりに、洋子だけ辛い想いをさせちゃったよね……」


 部長たちからは厳しく言われるし、同じパート内では無茶なことを言われる。

 後には引けなくなって、一人で視聴覚室まで行くことになってしまって。


「ごめんね、洋子。電話に出られなくてごめんね。ねぇ……何があったの? 何か、見た? 高志先輩がすごく心配してたよ。洋子が泣き叫んでたって――」


 言ったそばから扉が思い切り開いて、中から洋子が飛び出してきた。

 そうして、私に抱きつきわんわん泣いた。体が震えていた。